ブンデスリーガ熱狂塾
第13回「記録と記憶に残る男」
2025年04月18日
ドイツ・ブンデスリーガ24/25
毎週日曜日よる7時より放送中の「サンデーサッカー ドイツ・ブンデスリーガ24/25」。一体どんなサッカーリーグなの?と、思っている方もいるのでは。そこで「ブンデスリーガ」がもっと “楽しく” もっと“おもしろく”なるコラムをお届け。
「ブンデスリーガ」は世界で最も熱狂的なリーグだと言われていることをご存知でしょうか。ドイツ在住歴もあるスポーツライター・コメンテーターとして活躍するミムラユウスケさんが、熱狂のポイントを語ります。シーズンも終盤、あの選手の去就が注目を集めている。
第13回「記録と記憶に残る男」
ドイツサッカー界のレジェンドがバイエルンを去る。
バイエルンのトーマス・ミュラー(35歳)がバイエルンとの契約を更新せず、今シーズン限りでチームを去ることが発表された。おそらくブンデスリーガの舞台からも、離れることになるはずだ。彼はプロになる前からバイエルンの育成組織(ユースチーム)で育ち、ブンデスリーガのライバルチームへの移籍の可能性について聞かれたときには、笑い飛ばしていたからだ。
すでに、アメリカのMLSなどをはじめとして、キャリア晩年の選手が数多くプレーするリーグのチームからは水面下でオファーが届いていると見られている。スペインの名門FCバルセロナなどで活躍したアルゼンチン代表のリオネル・メッシなどがプレーするMLSは確かに、有力な候補となるだろう。
そんなミュラーの退団は大きなニュースになっているのはもちろんなのだが、実はドイツ人の多くの「怒り」を買ってしまっている。
例えば、ドイツ代表とバイエルンの先輩でもあり、バイエルンの監督時代にミュラーをプロチームでデビューさせたユルゲン・クリンスマンなどは、ミュラーがバイエルンの選手として引退できるような待遇を用意しなかった首脳陣の判断を公然と批判した。また、2025年に入ってからミュラーを試合で起用する機会を減らしてきたバイエルンの現監督ヴァンサン・コンパニにも、ファンやメディアからの批判が集まっている。
では、ミュラーが人々の怒りを喚起しているのは何故なのだろうか。
答えはシンプルだ。ミュラーとはドイツサッカー界を象徴するサッカー選手であるからである。
バイエルンはブンデスリーガ最多優勝を誇るドイツサッカー界の盟主であることは本コラムでもすでに紹介してきたが、ミュラーは、そんなバイエルンの歴史上でもっとも偉大なサッカー選手の一人だ。例えば、ミュラーはブンデスリーガ歴代最強のチームのなかで、以下の2つの記録を打ち立てている。
・バイエルンの選手としての公式戦最多出場記録
・バイエルンの選手としてブンデスリーガの最多優勝記録
そして、これらは、今シーズンの成績をもって、更新される可能性が高い。
ただ、ミュラーのドイツサッカー界への貢献はそれだけではない。2010年の南アフリカW杯では得点王に輝き、2014年のブラジルW杯ではドイツ代表の主力として優勝に導いた。そして、ブンデスリーガがアシストの統計を取り始めた2004-05シーズン以降で、もっとも多くのアシストを記録しているのもまた、彼である。
つまり、ミュラーとはドイツサッカー界の象徴であり、歴史そのものなのだ。だからこそ、彼の扱いをめぐって多くのドイツ人は感情をゆさぶられるのである。
ただ、ミュラーの魅力はそれだけではない。彼はひょうきんなキャラクターとしても有名であり、バイエルンに所属した経験のある宇佐美貴史や、現在も所属する伊藤洋輝などがチームに溶け込みやすいようにと気を使ってきたドイツ人でもある。前回のコラムで伊藤が今シーズン3度目の怪我をしたことは紹介したが、その報告をしたインスタグラムの投稿に対しても、ミュラーはすぐに反応。「君はファイターだから、きっとまた(筆者注:元気になって)戻ってくる」と書き込んだ。すると、伊藤は笑顔の絵文字とともにこう返信した。
「僕はあなたのジョークがすでに恋しくなっています」
ここまで読めば、もうおわかりだろう。ミュラーはドイツサッカーの象徴として多くの「記録」を残しつつ、おちゃめなキャラクターとして人々の「記憶」にも強烈な印象を残してきた選手なのだ。だから、人々に愛されてきた。そんな偉大なる選手がブンデスリーガの舞台に立つチャンスは、あと5試合だけ。ぜひ、最後までその雄姿を目に焼き付けてほしい。
文=ミムラユウスケ
ミムラユウスケ/スポーツライター、コメンテーター。2006年7月に活動をはじめ、2009年1月にドイツへ渡る。ドルトムントやフランクフルトに住み、ドイツを中心にヨーロッパで取材をしてきた。Bリーグ開幕日の2016年9月22日より拠点を再び日本に移す。著書に「光と影」(武尊と共著)、「心が震えるか、否か」「千葉ジェッツふなばし熱い熱いDNA」(香川真司と共著)、横浜ビー・コルセアーズ「海賊をプロデュース」、「淡々黙々」(内田篤人と共著)。構成に「鈍足バンザイ!」(岡崎慎司)。
X(旧Twitter)@yusukeMimura
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