毎週日曜日よる７時より放送中の「サンデーサッカー　ドイツ・ブンデスリーガ24/25」。一体どんなサッカーリーグなの？と、思っている方もいるのでは。そこで「ブンデスリーガ」がもっと “楽しく” もっと“おもしろく”なるコラムをお届け。

「ブンデスリーガ」は世界で最も熱狂的なリーグだと言われていることをご存知でしょうか。ドイツ在住歴もあるスポーツライター・コメンテーターとして活躍するミムラユウスケさんが、熱狂のポイントを語ります。バイエルンが王者となり幕を閉じた2024－2025シーズン。今シーズンは日本人選手の素晴らしい活躍が光っていました。

第16回「日本人選手の記録」

今シーズンのブンデスリーガは、実は日本人が過去最高の水準で活躍したシーズンとなった。

伊藤洋輝がバイエルンで日本人としては４人目となるブンデスリーガ王者となったのはもちろん偉大なことだ。ただ、それ以外の多くの選手も素晴らしい結果を残した。

まず触れるべきは、能力の高い選手の証である、シーズン10ゴールを記録した選手が出てきたことだ。日本人が10点以上を決めるのは、すでに引退した2014-15シーズンの岡崎慎司以来のこと。特筆すべきは、それを２人の日本人選手が同時に達成したことだ。

ホルシュタイン・キールの町野修斗が11ゴール、フライブルクの堂安律が10ゴールを記録した。日本人の歴史を紐解くと、過去に10ゴール以上決めたのは、他には香川真司と高原直泰を含めて3人しかいない。それくらい難しい偉業を、今回は2人の選手が同時に達成した。

しかも、シーズンに10点以上決めた選手の大半はフォワードのポジションを務める選手だった。堂安は、あの香川以来2人目となる、フォワードではないポジションの選手としてこの記録を達成した。そこは特筆すべき成果だろう。

実は、堂安は、もう1つ、素晴らしい成績を残している。

1シーズンの34試合全てに出場したのだ。長いシーズンにわたって試合に出場し続けるのは実は簡単ではない。厳しいレギュラー争いを勝ちぬいてはじめて試合に出られるのはもちろんのこと、イエローカードの累積やレッドカードによる出場停止があっても、怪我をしてしまっても、この記録は達成できない。実際、これまでに数多の日本人選手がブンデスリーガに挑戦してきたが、日本代表でキャプテンを務めてきた長谷部誠や遠藤航ですら、全試合出場はかなわなかった。ブンデスリーガで初めてプレーした日本人選手である奥寺康彦が1982－83シーズン（！）に達成して以来、長きにわたって誰も届かなかった記録である。

そんな記録を2度も成し遂げた、1998年生まれの堂安。1度目は2020－21シーズンに当時所属していたビーレフェルト時代のことだった。そして、今シーズン、今度はフライブルクの選手として、堂安は自身2度目となる全試合出場を達成したのだ。もちろん、複数回達成したのは今のところ堂安だけだ。彼はしばしば丈夫な体に生んでくれた両親に感謝しているが、日ごろの体のケアがなければ達成できない立派な記録だ。

ただ、今シーズンは、この達成困難な記録をもう一人、成し遂げた選手がいる。ブンデスリーガ挑戦1年目となった佐野海舟だ。日本からヨーロッパに来れば、言葉も文化も食事も異なる。適応しないといけない要素はたくさんあるため、本来の力を発揮できない選手が多い。だからこそ、佐野の偉業は評価されるべきだ。

他にも、ドイツの大衆紙「ビルト」によって、日本代表の守備のリーダーである板倉滉が、年間のベストイレブンに選出された。しかも、2022－23シーズンに引き続き、2度目のことである。これは公式記録とは異なるが、ドイツのサッカー報道のけん引役である

同紙から高く評価された事実は、忘れてはいけない。

このようにバイエルンの優勝で幕を閉じた今シーズンは、日本人にとっても記録的なシーズンとなった。そして、そんな彼らの活躍は多くの人の記憶にも残るということも、どうかお忘れなく。

文＝ミムラユウスケ

ミムラユウスケ／スポーツライター、コメンテーター。2006年7月に活動をはじめ、2009年1月にドイツへ渡る。ドルトムントやフランクフルトに住み、ドイツを中心にヨーロッパで取材をしてきた。Bリーグ開幕日の2016年9月22日より拠点を再び日本に移す。著書に「光と影」（武尊と共著）、「心が震えるか、否か」「千葉ジェッツふなばし熱い熱いＤＮＡ」（香川真司と共著）、横浜ビー・コルセアーズ「海賊をプロデュース」、「淡々黙々」（内田篤人と共著）。構成に「鈍足バンザイ！」（岡崎慎司）。

X（旧Twitter）@yusukeMimura